お役立ち情報
相続税の申告の期限に間に合わないときの対応
1 急ぎ税理士に依頼して相続税の申告を行う
⑴ 概算でも良いので申告することが重要
相続税の申告が期限に間に合わない場合は、一旦、完璧でなくてもよいので、申告書を税務署に提出し、納税することが重要です。
なぜなら、相続税については10か月の期限があり、これを過ぎても申告をしないままでいると、無申告加算税や重加算税といったペナルティだけでなく、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった相続税を安く抑える特例も使えなくなってしまうためです。
なお、申告していないことによる無申告加算税については、税制改正により、申告期限が令和6年1月1日以降の場合、最大40%の税金がかかります。
また、申告していないことが悪質と判断された場合の重加算税については、税制改正により、申告期限が令和6年1月1日以降の場合、最大50%の税金がかかります。
これらの詳細については、以下の国税庁のホームページの「相続税及び贈与税等に関する質疑応答事例(令和5年度税制改正関係)について(情報)(令和6年7月2日)」をご参照ください。
参考リンク:国税庁・相続税・贈与税目
⑵ 申告する際に忘れてはいけない書類
相続人が複数人いる場合は、相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出書(分割見込書)も一緒に提出する必要があります。
この初めの相続税申告の際、この分割見込書を提出していないと、後日、遺産分割協議がまとまり、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使おうと思った際に、これらの特例が使えなくなってしまいますので、注意が必要です。
なお、分割見込書の詳細については、以下の国税庁のホームページもご参照ください。
⑶ 払いすぎた税金は期限内に手続きを行えば返ってくる
取り急ぎ相続税の申告を行っていただき、相続税を納税した後、財産調査や財産の評価、特例の適用を適切に行った結果、相続税を払いすぎていたと分かった場合、更正の請求という手続きを行えば、払いすぎた税金が返ってくることがあります。
もっとも、更正の請求については期限があり、更正の請求を行う理由によっても期限が異なり、これを過ぎてしまうと、更正の請求ができなくなります。
更正の請求の詳細については、以下の国税庁のホームページもご参照ください。
参考リンク:国税庁・相続税及び贈与税の更正の請求手続
2 相続税の申告期限の延長は基本的に認められない
相続税の申告期限に間に合わない場合、申告期限の延長を考えられる方もいますが、この期限の延長については、地震などの被害にあわれたなど、「災害その他やむを得ない理由」がない限り、基本的に認められません。
以前はコロナウイルスの感染拡大から、簡易な手続きでも相続税の申告期限の延長が認められていた時期もありますが、現在は、コロナウイルスの感染等を理由とする申告期限の延長は、基本的に認められていません。
万が一、相続税の期限の延長手続きを行い、税務署が期限の延長を認めなかった場合、無申告加算税や延滞税が課せられます。
そのため、地震などに被災したなどの特段の理由がない限り、相続税の申告期限の延長は認められないと考えられた方が安全でしょう。
3 遺産が3000万円を超える場合はご相談を
このように、相続税の申告期限に間に合いそうにない場合は、相続税の申告期限の延長は考えず、取り急ぎ、相続税の申告を行った方が良いでしょう。
そもそも、相続税については、遺産額が3000万円を超えると課税される可能性があるため、遺産額が3000万円を超えそうと判断した時点で、とりあえず税理士にご相談いただき、実際に申告が必要かどうかを確認された方が良いでしょう。
また、そもそも、遺産額も不明な場合は、相続が発生した早い段階で専門家に遺産調査を行ってもらうこともおすすめします。
なお、相続税の申告を依頼する場合、申告期限ギリギリだと、通常の報酬よりも、報酬が割高になる可能性がありますので、注意が必要です。
遺産分割未了の場合の相続税申告 配偶者に対する相続税額の軽減